民法大改正について

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 近年行われた法律の大改正といえば、2006年の「新会社法」施行を思い浮かべる方も多いかと思います。
 有限会社設立の廃止や、合同会社の誕生など色々とありましたね・・・。
 私は、就職したばかりで、むしろ新会社法から学ぶことができたため、あまり苦労しませんでしたが、今回は違います。

 ばっちり、改正前の民法(以下「現行民法」という。)で暗記しているため、初学者に逆戻りするような気分です。
 そのため、民法の大改正(以下「改正民法」という。)に係る記事や条文は、あまり見ないようにしていました・・・。
 しかしながら、公布されてしまったからには、そうも行きません。
 末端ながら、プロとして、ここは頑張るときです。
 
 現行民法は、「学問」という意味では面白いものでしたが、あくまでも明治時代に作られたものであり、現代社会とかけ離れたルールが数多く存在しています。
 今回、ようやくそれを大きく改正する動きとなりました。

 さて、どのような感じに変わるのでしょうか?
 今回は、「債権法」に焦点を当てて、少し考察してみたいと思います。
 
 例えば、コンビニでお弁当を買うといった、私自身、普段、何気なくしている行動(取り引き)も、法律的な言葉に置き換えると、「売買契約」であり、「諾成・双務・有償契約」と呼ばれる法律行為となります(民法555条)。

 ここで、「諾成」とは、当事者の合意のみで成立することをいい、「双務」とは、互いに給付義務を有しているという意味であり、上述の例でいいますと、お店側の目線では、私が指定したお弁当を提供する義務があり、一方、私の目線としては、それに対する対価を支払う義務が生じているのです。
 なお、「有償」とは、当事者双方が給付するものに財産的価値があるという意味です。

 このバランスが成り立っている間は、法律に則った行為が自然と行われているため問題ありませんが、一方がその役割を懈怠したとき(=債務不履行があったとき)に初めて、法律が顔を出すこととなります。
 
 ただ、コンビニの例で話を続けるのは限界があるため、もっと大きな買い物として、「家」や「自動車」を購入することを想定したお話をさせていただきます。

 【事例 1】
 売主(A)から買主(B)が新築の建売住宅を購入する契約をしました(どの建売物件を購入するかは特定済みです。)。
 契約は無事に満了しましたが、もし、実際に家を引き渡される前に、落雷(天災)により、家が全焼してしまった場合、Bさんは、それでも支払いをしなければならないでしょうか?

 いきなりですが、これは、いわゆる「危険負担」と呼ばれる問題になります。
 債権者と債務者、そのどちらが家の焼失に関する危険(責任)を負担するのかということです。
 この事例に関して結論を言えば、現行法においては、Bさんは支払義務を免れず、Aさんは売買代金の請求を引き続き行えるということになります(債権者主義:民法534条)。
 「契約自由の原則」に基づき、これと異なる定めを置くことももちろん可能ですが、条文だけを見てみると「??」と不合理に感じる方もいるのではと思料します。

 では、改正民法ではどうでしょうか?
 Bさんが、引き続き支払いを行わなければならないか否かが、大きなポイントとなります。
 条文で確認してみましょう。

 当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができる(改正民法536条1項)。

 ・当事者双方の責めに帰することができない事由 → 落雷
 ・債務を履行することができなくなったとき → 建売住宅の引き渡し
 ・債権者は → Bさん
 ・反対給付の履行を拒むことができる → 売買代金の請求を拒むことができる。

 いかがでしょうか。
 Bさんは、焼失してしまった家の支払いをしなくていいという帰結になり、現行法とは結論がひっくり返っていることがよく分かります。

 
 【事例 2】
 売主(A)から買主(B)が「中古」の自動車を買い受ける契約をしました。
 しかし、後日、契約当初からエンジン(重要部分)に欠陥があることが判明したという場合です。

 中古車の契約状況にもよるため、こちらは安易に書ける事例ではありませんが、「売主の瑕疵担保責任(民法570条)」の適用の可否が問題となります。
 そもそも、「瑕疵担保責任」とは?
 ちょっと聞き慣れない言葉ですが、もう少々お付き合いください。
 簡単に申し上げると、一般の人では簡単に発見できないような瑕疵(欠陥) があった場合に、売主が買主に対して負わなければならない責任のことをいいます。
 これは、法が特に定めた無過失責任(逃れられない責任)であるため、非常に強力です。
 そのため、単なる瑕疵には適用されず、隠れた瑕疵(目的物が通常有すべき性質・性能を持っていないこと)でなければなりません。
 
 今回の事例におけるエンジンの欠陥が、隠れた瑕疵に該当するとした場合、現行民法において、Bさんは、Aさんの責任の有無に関わらず、損害賠償を請求することが可能となります。
 これは、事例 1と異なり、個人的には納得のいきやすい結論に思われます。

 ではでは、こちらも改正民法ではどうなるでしょうか?
 と、ここで少し驚きの展開が・・・。
 適用される条文自体が大幅に変更となります。

 具体的には、債務不履行の一般原則を定めた、改正民法415条で一元処理されることとなり、結論も、以下のように分かれます。
 ・Aさんに責任があるとき → 損害賠償の請求ができる。
 ・Aさんに責任がないとき → 損害賠償の請求ができない。

 確かに、現行民法におけるAさんの責任は非常に重く、当事者の公平を保つためには、改正民法が適しているようにも感じます。
 ただし、改正民法において、Aさんの責任の度合いが重くなる部分もあります。
 
 それは、「損害賠償の範囲」です。
 現行法では、Bさんが欠陥車を乗ることにより無駄にしてしまった利益(信頼利益)を賠償すれば良いだけでした。
 しかしながら、改正民法においては、Bさんが最初から欠陥のない車に乗れていれば得られていたであろう利益(履行利益)までもが賠償の範囲とされています。

 以上、事例を2つ挙げて考察してみましたが、いかがでしょうか?
 民法は1,000以上の条文から成り立っているため、ほんの一部の御紹介です。
 ただ、債権法だけ見ても分かるとおり、皆様の生活に非常に密接・不可分な法律です。

 これを機に、本屋さんで「民法入門」を手に取り、秋の夜長に読みふけってみては?と考えます(^ ^)